流体力学的絞込みの後、各粒子は集束された1つ以上の光束(ビーム)を通過します。 光の散乱(Light scattering)または蛍光発光(自家蛍光を保つ場合、もしくは粒子が蛍光標識されている場合)から粒子の特性に関する情報を得ることができます。
レーザーはフローサイトメトリーで最も一般的に使用される光源です。レーザーは特定の周波数で単一の波長の光(レーザーライン)を生成します。 それらは紫外から遠赤までのさまざまな波長で利用でき、レーザー出力を調整することができます。(光子の単位時間あたりの出力は通常mWで示されます)
光が粒子と当たると、レーザービームの光軸から前方向に通常20度以内の角度で散乱され、それが光電子増倍管(PMT)またはフォトダイオード(PD)によって検出されます。これは前方散乱(Forward scatter, FSC)チャネルと呼びます。 この角度は機器によって異なる場合があり、異なる機種間ではFSC信号の強度が異なります。 小さな粒子より大きな粒子のほうが多くの光を屈折させるため(FSCシグナルが強くなる)、このFSC測定により粒子サイズを推定することができます。ただし、サンプル、レーザーの波長、散乱光の検出角度およびサンプルとシース液の屈折率、 シース液にも依存します。 その良い例は小さな粒子の検出です。 粒子が光源の波長よりも小さい場合、例えば、 488nmレーザーを使用する200nmのエクソソーム検出では、光が必ずしも前方に散乱されるわけではありません。
励起光に対して直角方向で測定される光は、側方散乱(side scatter, SSC)といいます。 このSSCチャネルからは、細胞または粒子の相対的な複雑さ(例えば、粒度や内部構造)に関する情報が得られます。 前方散乱の場合と同様に様々な要因に依存します。
FSCおよびSSCはいずれも粒子ごとに固有であるため、これらの2つの組み合わせを用いて、血液など不均一なサンプル中に含まれる細胞をおおまかに区別することができます。 ただし、これはサンプルの種類とサンプル調製の質に依存するので、より詳細な情報を得るためには一般的には蛍光による標識が必要です。
様々な波長で蛍光測定を行うことにより、蛍光色素で標識した細胞表面受容体(タンパク質など)またはDNAおよびサイトカインなどの細胞内分子に関する定量的および定性的データが得られます。ほとんどのフローサイトメーターでは蛍光を検出するために、個別のチャネルおよび検出器を用いており、その数は機器およびメーカーによって異なります。検出器はPMT(光電子増倍管, photomultiplier tubes)またはアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiodes, APD)です。 PMTが最も一般的に使用されています。
検出の特異性は光学フィルターに依存します。 特定の波長を透過(通過)させつつ、他の波長をブロックします。光学フィルターには大きく3つの種類があります。ロングパスフィルター(LP)はカットオフ波長以上の光を通過させます。ショートパスフィルター(SP)は特定の波長以下の光を通し、バンドパスフィルター(BP)は特定の狭い波長範囲(バンド幅と呼びます)内の光を透過させます。これらのダイクロイックフィルター(もしくはミラー)は、位相差反射によって光を遮断し、特定の光を通過させ、他の波長を干渉します。(図2)。
ダイクロイックフィルターは入射光に対して一定の角度で設置したミラーです。 このタイプのフィルターは2つの機能があります。 一つめは特定の波長を順方向に通過させること、二つ目に、非透過光を直角方向に反射することです。 これにより、適切な波長の光を適切なフィルターに通すことができます。 図2のダイクロイックショートパスミラー(DSP)やダイクロイックロングパスミラー(DLP)などを巧みに用いてフローサイトメーターの光学系は形成されています。光学フィルターを正しく選択して適切な順序に配置することで、複数の信号を同時に検出ことができます(図3)。